一口馬主とは
1頭の競走馬を40〜500口程度に分割して出資を募集する、擬似馬主システム。 正確には商品ファンドという形の金融商品であり、金融庁の監督下にある。
そのため厳密には馬主資格を持つわけではなく、立場はクラブ会員。 レース選択や育成方針に口を出す権利は一切ない。
二層構造になっている
| 主体 | 役割 |
|---|---|
| 愛馬会法人 | 会員が出資する先。会員登録・出資受付・賞金分配を担当 |
| クラブ法人 | 馬主登録・競走馬登録を持つ。JRAから競走賞金を受け取る |
| 会員 | 愛馬会法人に出資し、各種控除後の賞金分配を受け取る |
賞金は JRA → クラブ法人 → (各種控除後)愛馬会法人 → 会員 の順に流れる。
できること
- 馬を選ぶ(出資馬の選択)
- 出資馬に会いに行く(北海道の育成牧場、天栄・しがらきの外厩)
- 口取り式に参加できる(人数が多い場合は抽選)
- 賞金の分配を受け取る
- 出資馬を選ぶための見学ツアーに参加(北海道、有料)
- 名付け親になれる
- GI勝利時のパーティーに参加できる
現実的な期待値
黒字化は簡単ではない。 ただし1歳から選んで現地に見に行く体験自体が楽しみの中心。
勝ち上がり率の実データ(2019〜2021年産・デビュー済み馬)
| 区分 | 勝ち上がり率 | 通算出走回数 |
|---|---|---|
| JRA全体 | 9.2回 | |
| 10.5回 | ||
| 11.3回 | ||
| 10.1回 | ||
| 10.0回 | ||
| 10.5回 | ||
| 10.3回 | ||
| 9.8回 | ||
| 12.4回 | ||
| 11.4回 |
※通算出走回数は現時点までのキャリア累計(多くはまだ現役のため生涯成績ではない)
ここでの勝ち上がり率はJRAでの勝利のみを数えている。JRA全体で32.3%と、 一般に言われる「勝ち上がり率30〜40%」とほぼ同じ水準。 つまりデビューできた馬でも、3頭に2頭はJRAで1勝もできない。
地方競馬へ移籍しての勝利まで含めると数字は大きく上がる(JRA全体で47.2%)。 ただしそれは「JRAで勝てずに地方で勝った」ケースを含むため、 出資馬がJRAで走る姿を期待するなら上の数字で見るのが正しい。 中小クラブほど地方移籍が多く、この差が大きく出る。
なお出資者目線では「そもそもデビューできないリスク」が別途あることにも注意。
出走回数はクラブ差が大きい
「走る回数が多い方が楽しい」という観点では、非社台系の方が有利。
年間ベース(2025年に出走した馬の、その年の出走回数の平均):
| クラブ | 現役頭数 | 年間出走回数 |
|---|---|---|
| 149 | 4.9回 | |
| 129 | 4.4回 | |
| 247 | 4.1回 | |
| JRA全体 | — | 4.0回 |
| 90 | 4.0回 | |
| 122 | 4.0回 | |
| 168 | 3.8回 | |
| 262 | 3.8回 | |
| 262 | 3.6回 | |
| 257 | 3.5回 |
ノルマンディーは年4.9回で最多、シルクは3.5回で最少。年1回以上の差がつく。 勝ち上がり率と出走回数はトレードオフの関係にあり、 「強い馬に出資したい」のか「たくさん走るところを見たい」のかで選ぶクラブが変わる。
ただし、差はクラブだけの要因ではない
出走間隔は所属厩舎と外厩の運用方針に大きく左右される。 実際、同じ社台系4クラブ(サンデー・キャロット・シルク・社台)の馬だけを取り出して 厩舎別に見ると、クラブ間よりも大きな差がつく。
| 比較軸 | レンジ(年間出走回数) | 差 |
|---|---|---|
| クラブ間(9クラブ) | 3.5 〜 4.9回 | 1.4倍 |
| 厩舎間(社台系クラブ馬・17厩舎) | 2.3 〜 4.3回 | 1.9倍 |
2025年・社台系クラブ馬を15頭以上担当する厩舎では、 松永幹夫4.3回・高野友和4.0回・池添学4.0回に対し、 森一誠2.3回・武井亮2.4回・木村哲也2.7回・手塚貴久2.7回と開く。
とくにノーザンファーム系クラブでは、ノーザンファーム天栄・しがらきといった外厩を使う馬は 外厩側の意向が強く働くと言われる。仕上がりを待ってから使う、 使い分けをするといった運用は、出走間隔として表に出てくる。
したがって「たくさん走るところを見たい」なら、 クラブ選びだけでなくどの厩舎に預けられる馬かまで見る必要がある。 募集時点で入厩予定厩舎が公表されるクラブも多い。
東西でも差が出る(関東馬を避ける出資者もいる)
同じ社台系クラブの馬でも、栗東(関西)所属の方が美浦(関東)より年0.8回多く使われる。
| 所属 | 頭数 | 年間出走回数 |
|---|---|---|
| 栗東 | 584 | 4.17回 |
| 美浦 | 612 | 3.35回 |
(2025年・社台系5クラブの馬。JRA公式データより独自集計)
このため「関東馬は避けて関西馬にしか出資しない」という方針を取る出資者もいる。 年0.8回の差は、5年在籍すれば4回分の出走機会の差になる。
もっとも、出走回数が多ければ賞金が増えるとは限らない。 使い分けやじっくり仕上げる運用が結果的に good performance に繋がることもあるため、 「よく走る=得」と単純に言い切れない点は留意したい。 あくまで出資して楽しめる回数の話として捉えるのがよい。
1頭あたり獲得賞金(2023年以降)
| クラブ | 頭数 | 1頭あたり獲得賞金 |
|---|---|---|
| 473 | 3,134万円 | |
| 457 | 2,358万円 | |
| 450 | 2,170万円 | |
| 164 | 2,027万円 | |
| 462 | 2,016万円 | |
| 234 | 1,399万円 | |
| 240 | 1,373万円 | |
| 313 | 1,124万円 | |
| 288 | 970万円 |
この数字だけで判断してはいけない。 クラブによって募集価格が大きく違うため、 出資額あたりの回収で見ないと比較にならない。 また平均値は一部の活躍馬に引き上げられており、大半の馬は募集価格を回収できない。
かかる費用
| 費用 | 支払いタイミング | 備考 |
|---|---|---|
| 入会金 | 入会時 | |
| 出資金 | 出資時 | 募集価格 ÷ 口数 |
| 保険料 | 年1回 | |
| 会費 | 毎月 | |
| 維持費(餌代など) | 毎月 | 口数で分割されるため、総口数によって1口あたりが変わる |
配当金・見舞金
賞金は「そのまま」もらえるわけではない
JRAが発表する賞金額から複数の控除を経て、会員の手元に届く。実質的な取り分は賞金の60〜70%程度。
控除の順序と率:
| 控除項目 | 率 | 内訳・備考 |
|---|---|---|
| 進上金 | 総賞金の20%(障害22%) | 調教師10% / 騎手5% / 厩務員5% |
| 進上金(付加賞) | 付加賞の5%(障害7%) | 付加賞にも別途かかる |
| JRA源泉税 | (賞金 − 賞金×0.2 − 60万円)× 10.21% | 総賞金75万円超の場合 |
| 消費税 | (賞金 − 進上金)× 10/110 | |
| 営業者報酬(クラブ手数料) | 総賞金の3% | 愛馬会法人+クラブ法人の報酬 |
残りが「獲得賞金等分配対象額」となり、口数に応じて分配される。
分配額は2種類に分かれる(税金の扱いが違う)
| 区分 | 内容 | 課税 |
|---|---|---|
| 出資返戻金 | 出資元本の回収分 | 非課税(そのまま受け取り) |
| 利益分配額 | 元本を超えた利益分 | 愛馬会法人・会員の各段階で20.42%の源泉徴収 |
出資返戻可能額は「競走馬出資金+維持出資金累計+保険出資金累計 − 前月までの返戻済額 − 出走月の簿価」で計算される。
分配のタイミングは、出走翌月下旬頃に月次分配。源泉徴収された分の一部は翌年春頃に年次分配として戻る。
進上金がかからない収入もある
特別出走手当(1走あたり50万円前後、基本的にすべての出走馬に交付)には進上金がかからない。
つまり走る回数が多いほど、賞金以外の部分で確実に積み上がる。 前掲の年間出走回数(ノルマンディー4.9回 vs シルク3.5回)の差は、 賞金だけでなくこの出走手当の差としても効いてくる。
このほか、6〜9着の馬にも着順に応じた出走奨励金(優勝賞金の数%)がある。
保険(シルク・ホースクラブの例)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 加入時期 | 原則2歳1月より |
| 保険料率 | 保険加入額の3.0%(年1回・12月請求) |
| 保険加入額 | 2歳は募集価格の100%、3歳は70%、4歳以上は50% |
年齢が上がるほど保険加入額が下がるため、保険料負担も軽くなる。
見舞金
- JRA事故見舞金: JRA施設内での事故・故障に対して支給。競走中の事故で死亡した場合705万円、競走能力喪失で670万円など、事故の種類と程度に応じて段階的に設定されている
- 抹消給付金: 引退時にJRAから150万円前後が支払われる
見舞金の金額は中央競馬馬主相互会の規定に基づき、改定されることがある。 またクラブによって会員への還元方法(分配するか、次の出資に充当するか等)が異なるため、 各クラブの規約を確認すること。
出典: シルク・ホースクラブ 出資と分配の仕組み / 一口馬主DB 配当金について / JRA 馬主活動に伴う収入・支出
クラブの種類
出自による分類
| 分類 | 特徴 |
|---|---|
| 牧場系 | 生産牧場が母体。自家生産馬が中心 |
| バイヤー系 | セリで購買した馬を募集 |
| 折衷系 | 両方 |
口数による分類
| 分類 | 傾向 |
|---|---|
| 大口(40口など) | 1口あたりの出資額・分配額ともに大きい |
| 中口 | |
| 小口(500口など) | 少額から始められる。分配も小さい |
社台系クラブについて
サンデーサラブレッドクラブ(サンデーレーシング)、社台サラブレッドクラブ(社台レースホース)、 G1サラブレッドクラブ(G1レーシング)、キャロットクラブ(キャロットファーム)、 シルククラブ(シルクレーシング)。
上の実データのとおり、勝ち上がり率・獲得賞金ともに上位を占める。 一方で募集価格も高く、出走回数は非社台系より少ない傾向。
各クラブの特徴
先に知っておくこと: 入りたいクラブに入れるとは限らない
以下の比較を見て「このクラブにしよう」と思っても、そもそも入会できない場合がある。
人気クラブは会員数に上限を設けていたり、新規入会の受付を期間限定にしていたりする。 また入会できても、前述の実績制・抽選制により、新規会員が人気馬に出資するのは難しい。
そのため実際には、1〜2年がかりの戦略になることが多い。
- まず入会できるクラブに入り、出資実績を作る
- 複数クラブに登録しておき、募集時期のずれを利用する
- 本命クラブの入会受付が開くタイミングを待つ
「思い立った年にいきなり本命クラブの人気馬」は基本的に成立しない。 そのつもりで、余裕をもって動き始めるとよい。
募集価格と成績の一覧(2019年産以降・直近5世代)
CIXは「平均総賞金 ÷ 平均募集額」を指数化した投資効率の指標。100を超えるほど募集額に対して賞金を稼いでいる。
勝ち上がり率の高い順に並べたもの:
| クラブ | 勝ち上がり率 | 平均募集額 | 平均総賞金 | CIX | デビュー率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 4,487万 | 4,646万 | 125.9 | 94.9% | ||
| 3,846万 | 3,525万 | 109.5 | 92.7% | ||
| 3,122万 | 3,048万 | 115.8 | 95.8% | ||
| 3,763万 | 3,384万 | 108.7 | 95.0% | ||
| 3,451万 | 3,510万 | 119.3 | 97.0% | ||
| 3,988万 | 2,088万 | 61.9 | 95.0% | ||
| 3,250万 | 2,732万 | 91.2 | 95.4% | ||
| 4,870万 | 2,360万 | 61.2 | 94.4% | ||
| 1,952万 | 2,195万 | 123.8 | 95.6% | ||
| 2,758万 | 2,103万 | 90.1 | 96.8% | ||
| 3,251万 | 2,361万 | 84.9 | 92.1% | ||
| 1,741万 | 1,603万 | 100.4 | 98.4% | ||
| 1,824万 | 2,487万 | 150.1 | 96.9% | ||
| 3,185万 | 1,906万 | 71.7 | 91.1% | ||
| 967万 | 1,384万 | 154.5 | 91.3% | ||
| 1,531万 | 1,165万 | 87.2 | 94.1% | ||
| 1,553万 | 1,812万 | 126.8 | 95.8% | ||
| 1,978万 | 2,170万 | 119.3 | 97.1% | ||
| ターファイトC | 1,893万 | 1,656万 | 97.6 | 97.2% | |
| 1,409万 | 2,017万 | 158.9 | 90.2% | ||
| ワラウカド | 3,033万 | 1,308万 | 47.7 | 89.7% | |
| ユニオンOC | 1,667万 | 1,441万 | 91.3 | 91.1% | |
| 1,438万 | 1,435万 | 107.4 | 89.1% |
出典: 一口馬主DB クラブ成績比較
この表の読み方
募集額が高いクラブほど勝ち上がり率も高いという傾向は表に出ている (4,000万円台のサンデーTCが56.5%、1,000万円台のユニオン・友駿が20%台)。
ただしこれは「高い馬が走る」という単純な話ではない。 募集額の高いクラブは母集団の血統・生産背景がそもそも違い、 高額馬が期待どおり走らない例も珍しくない(後述のセリ価格帯別データを参照)。
CIX(投資効率)で並べ替えると順位は入れ替わる。 YGGOC 158.9、京都TC 154.5、ラフィアンTC 150.1 が上位で、 DMMバヌーシー 61.2、ワラウカド 47.7 が下位。サンデーTCは125.9で上位だが1位ではない。
つまり:
- 強い馬に出資したい → 社台系(サンデー・キャロット・シルク・社台)。ただし募集額は3,400〜4,500万円台
- 出資額あたりの効率 → 中小クラブにも上位が多い。京都TC(平均967万)は最も安く、CIXは154.5
- デビューにこぎつける確率 → 大樹RC 98.4%、ターファイト 97.2%、ウイン 97.1% が高い。ワラウカド 89.7%、友駿 89.1% は低め
※前掲の「勝ち上がり率59.4%」等(独自集計)はデビュー済み馬のみを母数にした数字。 この表の勝ち上がり率は募集馬全体が母数のため、値が低く出る。定義が違う点に注意。
価格と成績の関係(セリ価格帯別・独自集計)
クラブ募集価格そのものではないが、市場取引価格(セリ)と競走成績の関係を実データで見ると、 「高い馬ほど効率よく稼ぐ」わけではないことがはっきり出る。
2019〜2021年産・JRAに出走した馬(n=4,460)を取引価格帯で分けたもの:
| セリ価格帯 | 頭数 | 勝ち上がり率 | 平均獲得賞金 | 中央値 | 賞金÷取得価格 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2,000万未満 | 3,114 | 798万 | 52万 | 99.0% | |
| 2,000〜5,000万 | 920 | 1,994万 | 494万 | 63.4% | |
| 5,000万〜1億 | 283 | 3,103万 | 1,273万 | 45.4% | |
| 1億円以上 | 143 | 5,640万 | 2,392万 | 30.7% |
読み取れること:
- 勝ち上がる確率は価格とともに上がる(22.6% → 72.0%)
- しかし取得価格に対する回収率は下がる(99.0% → 30.7%)。 1億円以上の馬でも、平均で価格の3割しか賞金を稼げていない
- 中央値と平均の差が大きい。2,000万未満の中央値はわずか52万円で、 平均798万円は一部の成功馬に引き上げられた数字にすぎない
高額馬は「走る確率」を買っているのであって、「儲かる確率」を買っているわけではない。 そして上の回収率は賞金ベースであり、実際の手取りは賞金の60〜70%、 さらに維持費・会費が別途かかる。どの価格帯でも収支を合わせるのは容易ではない。
口数と1口あたりの金額
同じ馬でも、クラブによって1口の値段が10倍以上違う。 ここが最初の分かれ道になる。
| クラブ | 口数 | 募集時期 | 1口出資比率 | 1口あたり目安 |
|---|---|---|---|---|
| 40口 | 6月 | 2.5% | 約112万円 | |
| 40口 | 6月 | 2.5% | 約86万円 | |
| 40口 | 6月 | 2.5% | 約69万円 | |
| 400口 | 9月 | 0.25% | 約10万円 | |
| 500口 | 7月 | 0.2% | 約8万円 | |
| 400口 | 10月 | 0.25% | 約4万円 |
※1口あたり目安は「前掲の平均募集額 ÷ 口数」で算出した概算。実際は馬ごとに異なる
- 40口クラブ(大口) — 1口100万円前後。当たったときのリターンは大きいが、 1頭あたりの負担が重く、分散しにくい
- 400〜500口クラブ(小口) — 1口10万円以下。少額から始められ、複数頭に分散しやすい
初めての1頭なら、小口クラブで複数頭に分散する方がリスクは抑えやすい。
代表馬(JRA GI勝利数順・独自集計)
| クラブ | 代表馬 |
|---|---|
| ブエナビスタ(GI6勝)、オルフェーヴル(GI6勝)、ジェンティルドンナ(GI6勝) | |
| アーモンドアイ(GI8勝)、イクイノックス(GI5勝)、エンブロイダリー(GI3勝) | |
| リスグラシュー(GI3勝)、エフフォーリア(GI3勝)、レイデオロ(GI2勝) | |
| ジャンタルマンタル(GI4勝)、スターズオンアース(GI2勝)、ネオユニヴァース(GI2勝) | |
| セリフォス(GI1勝)、ペルシアンナイト(GI1勝)、ジュールポレール(GI1勝) | |
| ロードカナロア(GI4勝)、レディパステル(GI1勝)、ロードプリヴェイル | |
| レッドファルクス(GI2勝)、レッドディザイア(GI1勝)、レッドリヴェール(GI1勝) | |
| ウインカーネリアン(GI1勝)、ウインクリューガー(GI1勝)、ウインバリアシオン | |
| パンサラッサ、クレッシェンドラヴ、ハナズレジェンド | |
| タイキシャトル(GI4勝)、タイキブリザード(GI1勝)、タイキフォーチュン(GI1勝) | |
| デアリングタクト(GI3勝)、アナザートゥルース、ディナースタ | |
| マイネルキッツ(GI1勝)、マイネルラヴ(GI1勝)、マイネルマックス(GI1勝) |
中小クラブでも、ノルマンディーのデアリングタクト(無敗の牝馬三冠)、 広尾のパンサラッサ(サウジC制覇)のような馬が出る。 確率は社台系が高いが、中小クラブから大物が出ないわけではない。
好きな馬の子供に出資できる可能性
見落とされがちだが、クラブ選びの軸としてこれは大きい。
クラブ所属だった名牝が繁殖入りすると、その産駒は同じクラブから募集される。 クラブと母体牧場が繁殖牝馬をそのまま保有するためで、実データでもはっきり出る。
| 母(現役時の所属クラブ) | 産駒の所属 |
|---|---|
| ジェンティルドンナ(サンデーTC) | モアナアネラ、ジェラルディーナ、マリーナドンナ 他2頭 → すべてサンデーTC |
| ブエナビスタ(サンデーTC) | コロナシオン、ソシアルクラブ、タンタラス 他6頭 → すべてサンデーTC |
| リスグラシュー(キャロットC) | シュヴェルトリリエ、ジリアート → すべてキャロットC |
| アーモンドアイ(シルクHC) | アロンズロッド、プロメサアルムンド、レジューノワール → すべてシルクHC |
つまり「応援していた馬の子に出資したい」なら、 その馬が走っていたクラブに入っておく必要がある。 出資した馬が牝馬で活躍すれば、その仔にも出資できる可能性が生まれ、 血統が続いていく楽しみ方ができる。
牡馬の場合は種牡馬入りするため直接の繋がりは薄れるが、 その産駒が同じクラブから募集されることはある。
募集時期
一般に1歳夏〜秋に翌年デビュー世代の募集カタログが公開され、そこから出資申込が始まる。 上表のとおり社台系は6〜7月、キャロット9月、ノルマンディー10月と時期がずれるため、 複数クラブを併用すれば年間を通じて検討できる。 追加募集の有無もクラブによって異なるので、各クラブの公式サイトで確認すること。
募集方式: 抽選制と実績制
人気馬には希望が集中するため、クラブごとに配分のルールがある。
実績制
過去の出資実績をもとに、優先的に出資できるかが決まる方式。 長く在籍して出資を続けているほど有利になる。細かいルールはクラブによって大きく異なる。
抽選制
そのままの意味で、申込者から抽選で決まる方式。 ただしクラブによっては、抽選の中でも一定の条件で優先される仕組みを持つところもある。
どちらを採るかはクラブ次第
どちらか一方だけのクラブもあれば、両方を組み合わせるクラブもある。 募集要項で確認すること。
いずれの方式でも、新規会員がいきなり人気馬に出資するのは難しいという点は共通している。
クラブ別メモ(個人的な所感)
サンデーTC
社台TC
キャロットC
シルクHC
G1TC
その他
税金について
一口馬主の分配金は所得税法上匿名組合契約に基づく利益の分配にあたり、原則として雑所得として扱われる。 馬券の払戻金(一時所得)とは扱いが異なる。
1. 収入にあたるもの
クラブから振り込まれる分配金には複数の種類があり、いずれも収入として扱われる。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 賞金分配金 | 1〜5着(および出走奨励金の対象)の賞金から各種控除後に分配される |
| 出走手当 | 特別出走手当(1走40〜50万円前後)。進上金が引かれず全額が馬主側へ入る |
| 賞品売却分配金 | 優勝時のトロフィー・メダル等(貴金属製)を売却した代金の分配 |
| 見舞金 | 故障・事故時に支給。休養期間の維持費補填の性格を持つ |
| 売却代(馬体価格) | 引退時に馬を売却した場合の代金の分配 |
| 終了時精算金 | 保険金の精算、消費税精算、抹消給付金など |
2. 出資返戻金の正体は「経費」
分配金は税務上、利益分配金(課税対象)と出資返戻金(非課税)に区分される。 この区分は、税金計算の基本式に対応させるための仕組みである。
(収入 − 経費)× 税率 = 税額
出資返戻金は、この式の経費に相当する部分を表している。 「その賞金を得るために費やしたお金は差し引いてよい」を実現するための概念であり、 以下の2要素から計算される。
① 対象馬の維持会費・保険料 — 馬の飼育・管理に直接かかった費用
② 減価償却費 — 出資金から残存簿価を引いた額
3. 減価償却の仕組み(2歳4月から48か月)
税務上、クラブ馬は2歳4月から4年(48か月)かけて償却される。
例)出資金1,200万円の場合
1,200万円 ÷ 48か月 = 毎月25万円が費用として配分される
この配分額が、賞金分配のたびに「出資返戻金」として計算に使われる。 つまり出資したお金は、走って稼ぐより先に、時間の経過で経費化されていく。
その結果、以下が起きる:
- 稼ぎが少ないうちは、分配金のほぼ全額が出資返戻金=非課税になる(後述のパターンD)
- 大きく稼いで元本を超えると、超過分が利益分配金として課税対象になる
4. 源泉徴収(20.42%)
クラブは会員へ分配する際、利益分配金の部分にのみ20.42%を源泉徴収して送金する。 これは会員に代わってクラブが税務署へ納付済みの金額である。
- 出資返戻金の部分には源泉徴収されない
- 源泉徴収された分の一部は、翌年春頃に年次分配として戻ってくる場合がある
- 源泉税額はクラブが発行する支払調書で確認できる(確定申告時に必要)
5. 確定申告が必要か
給与所得者の場合、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円を超えたら申告義務が生じる。 複数クラブに加入している場合は全クラブを合算して判定する。
| パターン | 状況 | 申告義務 | 備考 |
|---|---|---|---|
| A | 雑所得等の合計が20万円超 | あり | |
| B | 雑所得等の合計が0〜20万円 | なし | 申告すれば還付の可能性 |
| C | 雑所得がマイナス(赤字) | なし | 申告すれば還付の可能性 |
| D | 分配金がすべて出資返戻金の範囲内(源泉税ゼロ) | なし | 申告しても戻る税金がない |
赤字でも申告する価値がある。 分配金は受け取る時点で20.42%が源泉徴収されているため、 その年が赤字だったり本業の税率が20.42%より低い場合、申告すると払いすぎた分が還付される。
雑所得の金額は次のように計算する:
(分配金のうち利益部分・源泉徴収前の金額) − 必要経費(会費・維持費など) = 雑所得
所得区分(雑所得か事業所得か)、経費として認められる範囲、複数年にまたがる損益の扱いなどは 個々の状況で変わる。実際の申告にあたっては国税庁の資料または税理士に確認すること。
出典: 一口馬主DB 税金教室 / 同 出資返戻金について / マネーフォワード クラウド確定申告 / 望月会計事務所